近くの銭湯で、ひとりになる

サウナじゃない、スパでもない、「近くの銭湯」へ

最近はちょっとおしゃれなスパや、映えるサウナが人気だけど、私がふと行きたくなるのは、駅の近くにぽつんとある昔ながらの銭湯だ。入り口には、ちょっと色あせたタイルと、のれん。靴をロッカーにしまい、引き戸を開けると、番台のおばちゃんがテレビを観ながら「いらっしゃい」と声をかけてくれる。

石鹸の香り、天井から降る白熱灯の柔らかい明かり。新しさも華やかさもないけれど、そこには「気取らなさ」と「許される空気」がある。肌を見せる場所なのに、不思議と他人の目を意識しない。洗い場ではご近所のおばあちゃんが今日の天気の話をしているし、湯船では若い人が静かに目を閉じている。

ここには「何者でもなくていい」空気がある。ただ黙ってお湯に浸かるだけの時間に、ちいさな自由がある。


一人で銭湯、恥ずかしいと思っていたけれど

正直なところ、初めて一人で銭湯に行ったときはちょっとだけ緊張した。友達となら笑いながら入れるけれど、一人だと「変じゃないかな」って気になる。でもいざ入ってしまえば、思っていたよりずっと自然で、誰もこちらを気にしていないことに気がついた。

浴槽でとなりに座っている人は、きっと私のことなんて見ていない。むしろ、それぞれが自分だけの静かな時間を過ごしていて、「干渉しない心地よさ」が漂っている。そういう空気のなかで、ちょっとだけ強張っていた身体の奥が、ゆるんでくる。

手足を思いきり伸ばして湯に沈める。銭湯のお湯はなぜか家より熱くて、身体の芯まで届くような感じがする。ひとりで過ごすのがこんなに気持ちいいなんて、知らなかった。


銭湯に持っていくもの、最小限でじゅうぶん、だけど

銭湯に行くときの荷物は、少なめに。タオル、シャンプーとボディーソープの詰め替え、あとはTシャツと下着。適当なトートバッグに入れて持っていくのが、銭湯にはちょうどいい。おしゃれなポーチより、コンビニ袋だっていい。その生活感がなぜか馴染む。

洗い場の椅子に腰掛けて、お湯で身体を流す時間が好きだ。あたたかいお湯を何度も背中にかけると、自分の輪郭がまあるくなる気がする。どんな日でも、ここに来て、大きなお風呂に入って手と足を伸ばすと「まあいっか」と思えるようになる。

特別な美容アイテムも、バスソルトもいらない。ただ、お湯と石鹸と、じぶんの時間。
もしじっくりヘアケアに向き合いたいときは、ポーションタイプのヘアトリートメントをひとつと、シャワーキャップを持っていく。シャンプーの後、ヘアトリートメントを塗って、シャワーキャップを被ってしばらく大きな湯船に入ると、かなり髪がしっとりする。これはおすすめ。


お風呂上がりの楽しみ、小さなご褒美をひとつ

脱衣所に出ると、壁の鏡には赤くなった顔が映っていた。のぼせやすいからね。髪を乾かしながら、火照ったままの身体で、ベンチに腰をおろす。目の前の冷蔵庫には、瓶入りのフルーツ牛乳、コーヒー牛乳。キャップを開けてぐっと飲み干す。なんてことないけど、これが最高。

そして、実は最近は「時々お酒を提供している銭湯」もある。湯上がりにジョッキを片手に、風にあたっている人たちがいて、なんともよい空気が流れている。私も、とビールを注文して、適当に流れているTVを見てるふりしてだらーっとしてる。

このあと何をしようとか、スマホを見ようとか、何も考えずにただぼーっとする時間。少し濡れた髪で外に出ると、夜風がすーっと肌をなでてくれる。夏だったら、近くのスーパーで棒アイスを買って、食べながら帰ろうかな、とか。ビーチサンダルをペタペタと鳴らしながら歩く。


銭湯という場所で、「ひとりに」なる

静かな場所なのに、誰かの話し声や笑い声がかすかに聞こえる。その中で、私はひとりでいる。家にいても、仕事をしていても、「ひとりになれない」ことがある。でも銭湯では、不思議と自分のことだけ考えられる。

誰かの視線も、SNSの通知も、きれいに忘れられる時間。ここでは、ひとりであることが、なんだかちょっといいものに思えてくる。

「ひとりに」なるって、孤独とは違う。ただ、自分自身のままでいられるということ。誰とも話さずに帰っても、ちゃんと満たされている。そういう時間をくれる場所が、近所にあるというだけで、今日はちょっと気持ちが軽くなる。

銭湯に行ってみたくなった人へ:都内おすすめ銭湯3選

ひとり銭湯、思っていたよりも気軽で、居心地がよかった。
そんな気持ちになった人の背中をそっと押すべく、「ひとりでも行きやすい」「雰囲気がやさしい」そんな都内の銭湯を3軒ご紹介します。

武蔵小山温泉 清水湯(品川区/武蔵小山駅)

黒湯の天然温泉に露天風呂、サウナ、岩盤浴まで揃った、銭湯の域を超えた本格派。水風呂まで黒湯。だけど「街の湯」として地域に開かれていて、はじめてでも居心地がいい。武蔵小山の商店街「パルム」のすぐそばで、お風呂上がりのサ飯もいろいろあって楽しい。
サウナなどは休日かなり混んでいるけど、時間帯を考えるとゆっくり入ることもできますし、別にサウナ必要ないかも、って思ったら普通に銭湯価格で楽しめる。生ビールもあるよ。

http://www.shimizuyu.com/

東京浴場(目黒区/西小山駅)

2025年に5周年を迎える、デザイン銭湯。やさしい木の香りと、シンプルだけどあたたかい雰囲気に包まれる空間。漫画も大量にあるし、クラフトビールの提供も!「銭湯ってちょっとおしゃれだな」と思える一軒。

サウナに行きたい人はここの「おこもりサウナ」がおすすめ。一人用のサウナだから、じっくりと「ひとり」を味わえます。好きな音楽を聴くこともできるし、オーディブルなどもサウナ内に流せるのも最高。5:00〜12:00という時間も開いてるのがめちゃくちゃいい。

https://245tokyoyokujo.com

久松湯(練馬区/桜台駅)

建築好きにもファンの多い、銭湯建築の名作。2015年はグッドデザイン賞も受賞している建物・モダンで美術館のような佇まいながら、お湯は天然温泉で本格派。

露天風呂あり、サウナも充実。地元の人にも観光客にもやさしい雰囲気。プロジェクションマッピングもあるので、ゆったりぼんやりできる環境が整ってる。

https://www.hisamatsuyu.jp

私が一番好きな銭湯は、出会ったとき聞いてください。